「何かを表現したい」。そんな単純な動機で短大の美術科油彩コースを選択したという、札幌在住の造形作家、経塚真代さん。しかし、キャンバスに向き合う日々も、「自分が何を表現したいのか、それが最後まで見つけられませんでした」。卒業後、「心にモヤモヤしたものを抱えたまま」一般の会社に就職し、会社員生活を送ります。再び創作と対峙したいと考えたのは27歳の頃。「何かを表現することを諦めきれない」と、仕事を続けながらCAI現代芸術研究所のアートスクールに通いました。プロのアートディレクターや美術家たちの生きた講義、同期生らからの刺激を受ける中で、経塚さんは、新たに自分の中にある「造形作家の可能性」に気づきます。

 

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29歳の時に造形物の創作に集中するために退職。当時の作風は今とは全く違うもの。「表情のはっきりした、今思うと表面上だけの作風でした」。自身の投影でもあるという現在の経塚作品の特徴的なフォルム。おかっぱ頭で長い首、どこか切ない表情をしたなで肩の少女が生まれたのには、ちょっと哀しいきっかけがありました。それは、家族のように愛情を注いでいた愛犬の死。「彼女が死ぬ少し前、そのまま犬として作品にしたんですが、ふと『女の子』にしてみたらどうだろう?と思って作ったのが今のフォルムです。出来たとき、『自分が作りたかったのはこれだったんだ』と、開放感と感動を覚えました」程なく愛犬は亡くなり、大きな悲しみに襲われた経塚さんでしたが、この女の子を一体一体作りあげるごとに、自身の中の喪失感が癒されて、とても穏やかな気持ちになっていったと言います。

 

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「この子に名前はあるんですか?」と、作品を見た人に聞かれることもありますが、名前は敢えて付けないようにしているそう。
「見る人が、名前もなく無表情なこの作品と対峙した時、相互の間に介在する『何か』が生まれてほしいから」
頭の上に不思議な物体を乗せている作品が多いのも特徴。動物のかぶり物や帽子から始まり、月や土星、雲、果物など、詩情を感じさせるパーツを頭に乗せて、その不思議な世界観を醸し出します。
「帽子には、内面を隠してくれる安心感があるような気がするんです。『自分自身を隠したい』という、少しコミュニケーションが苦手だった私の心理が投影されているのかもしれません」

 

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男女を問わず、今や全国に経塚作品に魅せられたファンがいます。九州からわざわざ作品を購入しに来てくれた方もいました。作品が「嫁いでいく」ことに寂しさは無いという経塚さん。
「作品が、あたたかい家庭に貰われていって愛される。そのイメージは、私にとって幸せなことです」
海外も含め、より多くの人に作品を見てもらいたいと語る経塚さん。木紛粘土に岩絵の具で着色する素朴なマティエールの小さな作品ですが、その中には、さまざまな葛藤を経てたどり着いた、彼女の強い思いが込められています。
「振り返ると、全ての出来事がこの作品に出会うための一本の道だったような気がします」

 

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経塚 真代さん – masayo keizuka
1978年 札幌生まれ。
札幌大谷短期大学 美術科 油彩コース 専攻科卒業
CAI現代芸術研究所11期生

 

主な個展
2012. 9「 I am kuu」 Gallery Newstar 札幌
2013. 9「 ちいさくて見えない星 」 CAFE ESQUISSE 札幌
2014. 4「 昨日の出来事」 ギャラリー犬養 札幌
2014. 9「九月の旅人 」 六花亭福住店 札幌
2014.12「こんにちは さようなら」 喫茶つばらつばら 札幌
2015. 9 「 伝えられなかった言葉たち」trim  東京
2016. 4「 いつも言った事と思った事は違っていた」TSURU CAFE  札幌

 

受賞/ 入選
2012.10 「 モリノカイワ」ニングル大賞 富良野 / 佳作賞受賞
2013.10 「 悲しい時にしか見えない物がある」第88 回 道展 市民ギャラリー/ 入選
2014.10 「 月にも見離された夜に」 第89 回 道展 市民ギャラリー / 佳作賞受賞
2015.10 「 あの時飛べなかった鳥へ」第90 回 道展 市民ギャラリー / 新会友
2015.12 「 見ているのか 見られているのか」JRTOWER ARTBOX /優秀賞受賞

 

主な企画展
2014. 7 「 cute」 北広島芸術文化ホールギャラリー
2014.10 「 セブンストーリーズ 」 本郷新記念札幌彫刻美術館
2015. 5 「 時間旅行」樽前arty苫小牧
2015. 7 「 art planets2015」 プラニスホール 札幌

 

造形作家

URL http://masayokeizuka.com

※各種情報は記事掲載当時のものです。現在は変更となっている場合がございます、予めご了承ください。

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