-この度、著書「生きることは食べること〜森崎博之の熱血あぐり魂〜」を出版されるということですが、本書の内容と、この本を通して読者に伝えたかったこととを教えていただけますか?
森崎 この本は、ホクレンから北海道内生産者・JA向けに毎月発行されている「広報ほくれん」という広報誌に書いてきた6年分のコラムを中心に、対談やレシピ紹介などの撮りおろしも収録したエッセイ本です。僕は「あぐり王国北海道(HBC/現在『あぐり王国北海道NEXT』)」という番組を通じて全道の野菜、酪農、加工品を取材してきました。現地に行くと、大変面白くユニークな話がいっぱい聞けるんですが、それをどうすれば、一緒に出演している子どもたちにも分かるように、敷居を下げて伝えられるかということを考えてやってきました。このコラムも同じようなスタンスで毎月書いています。そもそも食べることというのは全世代に共通の話題なので、わかりやすく伝えることで、皆が楽しめるエンターテインメントになるんじゃないかという思いもありますね。

 

 

-よろしければ、内容の一端をお聞かせいただけますか…。
森崎 例えば、レタスは和名がチシャといって、漢字で「乳草」と書くんです。どうして「乳」かと言うと、レタスを収穫する時、切り口から白い乳のような粘性の液体が出るんです。それは新鮮なことの証しで、ラクチコピクリンと言う成分なんですが、この成分は、軽い鎮静作用と催眠作用があるとされていて、おとなり韓国ではプロのドライバーは運転の1時間前はレタスを食べないようにしていると言うんですね。そういうおもしろい蘊蓄(うんちく)をいろいろ書いているので、この本が、ちょっとした野菜蘊蓄百科のようなものとして、見て読んで役に立つ本になってくれたら嬉しいなあと思っているんです。

 

-この本の中にはいくつか対談も収められていますが、少しご紹介頂けますか。
森崎 浜頓別町で体験型ファーム「ぶんちゃんの里」を経営している小川文夫さんに改めて会いにいきました。「ぶんちゃんの里」には、番組開始初年度に初めて伺って、子どもたちと一緒に、売られていく牛の姿を見たんです。その牛は、やがて肉となってスーパーに並び、皆の食卓にあがる。小川さんは「わたしたちの食べているのは全て命なんだよ」ということを話してくれました。人間がミルクをいただくために、牛たちは妊娠させられる。生まれてきた子牛がオスだったら、1年から2年でお肉になる。メスだとしても3〜5回妊娠させられて、搾乳され、出産し、10年後にはやはり肉になってしまう。その現実を僕も頭ではわかっていたことですが、あらためて聞くそのリアルさにもの凄い衝撃を受けました。
小川さん曰く、「動物も、魚も、植物も、その命をいただくから『いただきます』って言うんだよ」と。普段、なにげなく口にしている「いただきます」という言葉がとても重く大切な意味を持つものとして、僕らの胸に収まった瞬間でした。
「生きることは食べること」というこの本のタイトルもそこから繋がっているんです。小川さんは、そんな理念を僕らに教えてくれた方なんです。

 

 

-「あぐり王国北海道」に出演していた小学生が、現在大学で農業を学んでいるともお聞きしました。感慨深いものがあるのでは?
森崎 そうなんです。小学校5年生の時、あぐりっことして「ぶんちゃんの里」にも一緒に行っている國友裕成くんです。この本でも彼と対談しました。彼のご両親は農業をやっているわけではないんですが、本人は番組に出たことがきっかけになり農業高校を経て、今は江別市の酪農学園大学で農業経営学など幅広い視点で農業のことを学んでいるんです。
他にも、今は東京の中学校に通う番組に出演していた子が、将来の夢はと聞かれて「北海道で米農家になりたい」と言っている話しを聞くと、農業と言うものが子どもたちのピュアな心に響いてくれたんだなと思ってすごく嬉しいですね。いつか彼らが本当に農家さんになって、僕が取材に行く。そんなリレーが実現したら、きっと身震いするほど感動するでしょうね。

 

-農業のどんなところに、子どもたちは魅力を感じたんでしょう?
森崎 ピーマン嫌いの子を集めて、生産者のところに連れて行ったことがあるんです。実際にピーマンがなっているビニールハウスに行くと、初めて見るわけですからみんな感動するんです。「こんなふうにできるんだ!ツヤツヤできれい!!」って。「好きなものを穫っていいよ」と言って収穫させると、またそこでも無邪気に喜ぶ。そしておもむろに僕がガブリと一口食べて「甘いっ!!」って言うと、「僕も、私も」って食べるんです。「本当だ、美味しい。今まで食べてきたものと全然違う」ってとても楽しそうなんです。本当の味に触れるという体験がそこにはあるんですよね。そしてその傍らで、笑顔満面の生産者が「僕は君たちに喜んでもらうためにピーマンを作っているんだよ」って言ってくださる。子どもたちだからこそ、このシンプルで飾らない現実、仕事に本気で憧れてくれたのかもしれませんね。

 

-森崎さんはご出身が東川町ということですが、幼い頃から農業は身近なものだったんですか?
森崎 そうですね。祖父母が米農家で、いろいろな野菜も作っていました。小さい頃は、冷蔵庫からマヨネーズをもって畑に行って、そこでもぎたてのトマトやきゅうりにちょっと付けて食べるというのがおやつでしたね。当時から、畑は僕のフィールドだったんです。北海道の農業を応援するという、今の役割がとても自分に向いていて、ライフワークだと思っています。

 

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-この本には、森崎さんの北海道の農業を応援するという気持ちも込められているんですね。
森崎 僕自身は以前から「苗を植える人じゃないけれど、苗を植える人を、心から応援する人でいたいんだ」と言っているんです。
生産者は、消費者のことをとても真剣に考えてくれています。消費者の元に「新鮮で美味しい野菜を届けること」をゴールと考えて、そのためにはどうすればいいのかという課題と日々格闘しています。一方の僕たち消費者はどうでしょう?何か生産者のことを真剣に考えることがあるだろうか、というもやもやした思いがずっとあるんです。ニュースなどで垣間見る農業の将来に対する不安やリスクを語ることはあるけれど、そういう目線だけで良いのかな?とずっと思っているんです。TEAM NACSも今年20年周年ですが、これまでやってこれたのはファンのみなさんの応援があってのこと。エールを送ってくれる人がいるというのは、とても大事だということを身を以て僕は実感しています。だから生産者に対しても、「北海道は農畜産物大国なんだから農家さん、頑張れ」とか、「今年も美味しい野菜を作ってくれてありがとう」とか、みんなで応援すれば、ひょっとしたら政治がどう動こうと不安はないんじゃないないだろうかと思ったりするんです。その生産者に対する応援の旗を、僕が先頭に立って振りたいという思いが強くありますね。

 

-本書は、7月末に開催される「CUE DREAM JAM-BOREE 2016」の会場で先行発売されるそうですが、今回のジャンボリーの見どころを、最後に教えていただけますか?
森崎 そうですね。ジャンボリーは2年に1度北海道のみで開催していて今回で8回目となるんですが、10年振りに大泉洋が総合プロデュースします。テーマは「仲間」で、笑えてちょっとほろりとくるような面白い芝居を打つ予定です。最終日はライブ・ビューイングも全国の映画館で行うので、一度感情で楽しんだ方も改めて楽しんで欲しいですね。

 

森崎さんの北海道農業に対する思い溢れるインタビューとなりました。

 

 

CUE DREAM JAM-BOREE 2016の詳細は 特設サイトをご覧下さい。

〈インタビュー/2016年7月12日〉

森崎博之さん
1971年北海道東川町出身。1996年に大泉洋・安田顕・戸次重幸・音尾琢真と結成した演劇ユニット「TEAM NACS」のリーダーを務め、数多くの舞台作品の脚本・演出を手掛ける。2008年からスタートしたHBC「森崎博之のあぐり王国北海道」は2016年4月に「あぐり王国北海道NEXT」にリニューアルし、北海道の食をあらゆる角度から取り上げている。北海道フードマスター、ごはんソムリエを取得し、食育の大切さ、北海道の素晴らしさを連載コラム・講演会にて発信している。

 

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