22年前、六畳一間のマンションで産声をあげた芸能プロダクション、クリエイティブオフィスキュー。ここから発信することが、受け手にとっての「CUE (きっかけ)」になれば、という願いを込めたといいます。「私の基本にあるのは、人を喜ばせたいという気持ち。人が楽しんでいる姿を見るのが大好き」と話す鈴井亜由美社長。自身は、中学でギターにはまり、高校時代はガールズバンドを組んでライブを行っていたそうです。 バンドの発表の場を求めて、当時、地元の小樽で毎年開催されていた野外イベントに、高校生ながら実行委員として参加。大人達に混じって一緒にひとつのエンターテインメントを作り上げるという刺激的な達成感は、その後の劇団活動への傾倒、ひいては現在のプロデュース業に繋がる原体験だったのかも知れません。

 

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今やキー局のドラマや映画に引っ張りだこの演劇ユニット「TEAM NACS」の面々を旗頭として、全国的に名の知れた存在となったオフィスキュー。「ターニングポイントだった」と振り返るのは2004年の大手芸能プロダクション、アミューズとの業務提携。「地デジ化への設備投資が負担になり、地方局が番組づくりに十分な資金を回せなくなるのでは、という不安と、NACSも30代に突入しつつあり、彼らも会社の社員も共にスキルアップを考えないと成長しない、という危機感からの決断でした。周りからは『なぜ東京の会社なのかと。プライドは無いのか』と激しく言われました。でも東京で彼らが活躍すれば、きっと北海道の人も喜んでくれるはず。だからあの時、あえて地方のちっぽけなプライドは捨てて自らその門をたたきました」。 東京で本格的に役者の仕事をすることに前向きな覚悟を示すメンバー達の中で、最後まで反対していたのが大泉洋さん。「東京に行けばすぐにつぶされちゃうかもしれない」と深刻に悩んでいたといいます。そんな彼に掛けた、会長鈴井貴之さんの言葉に、オフィスキューが大切にする「ファミリー意識」が凝縮されている気がします。「鈴井(貴之さん)が言ったのは『大泉くん、僕たちはもう小さな川から大海に出航してしまったんだ。でも、君だけで漕げとは言わない。オールはみんなで持つんだ。みんなで漕ごう。それでもし、この水は違うなと思ったら、引き返せば良いじゃないか』。この言葉が彼にどれほど勇気を与えたか」。

 

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本社を札幌に置きつつ東京での活動が増えた事で、鈴井社長も「北海道を俯瞰で見られるようになった」という変化が。そして会う人ごとに掛けられる「北海道は良いですね。うらやましいですね」という言葉。「北海道の魅力って何だろう?意外と自分は解っていなかったのかもしれない。もう一度勉強してみよう」。 そんなとき偶然目にしたのが、帯広の出版社が発行する情報誌「スロウ」。その中には、北海道に住んでいながら今まで知らなかった魅力的な人々や地域産品がありました。「仕事の合間を見ては道内各地に足を運んで、ひとつひとつ訪ねて回りました。自分なりに北海道をプロモーションするとしたら…。それを考えているうちに『しあわせのパン』という映画の発想がうまれました」。

 

プリント

                                     © 2014 『ぶどうのなみだ』製作委員会
―「しあわせのパン」そして「ぶどうのなみだ」という北海道を舞台とする映画をプロデュースした動機を教えてください。
私自身がここ北海道を愛していて、次の世代に「素晴らしい土地なんだよ」と伝えたかった。同時にこんなに素敵な景色や食があるのに、道外や海外に発信しないのはもったいないとも思いました。そのために今私に何ができるのか、何をすべきなのか、というひとつの答えが映画を作ることでした。

 

―「オール北海道」にこだわりました。
2本ともこの地に住んでいなければ作れない映画。東京の人たちがロケ地として使って、ぱっと帰っていく映画とは絶対に違う。それは、作る前から地元の人たちと一緒になって、地元の「モノ」を取り入れて作っているからなんです。ちゃんと残るものがあるはずなんです。

 

―一方で映画コンテンツを作るのは難しい地でもあるとも話していましたが。
やはり映画を作るためには東京の発信力、発信手段、制作スキルの強さは必要でした。これは北海道の課題ですね。ただ、「地域産品や地域を盛り上げるために、私たちも力を合わせましょう」といって道内企業が出資してくれたのは嬉しかったです。東京のパートナーと道内企業が連携して「北海道の強み」を伸ばしていけるんだということが、最初の映画「しあわせのパン」でわかりました。

 

―昨年、道と「包括的連携協定」を結びました。その意義は。
「しあわせのパン」公開後、コンテンツだけでなくもっと北海道の生産者を応援する意味で食関連事業の会社を立ち上げ、道産小麦100%のベーカリーショップ「coron」をプロデュースしました。そんな姿勢も認められたという面があります。また、映画は当然アジアからのインバウンドも意識していて、実際に台湾や韓国でも公開されていますが、公開と同時に北海道の食やプロダクツなどを紹介するイベントができると良いなと思っているので、この協定でそれが実現に近づくのではと思っています。

 

―改めて北海道を盛り上げようという強い意志を感じます。
私たちはここ(北海道)で生きているのではなく、生かしていただいているという意識なんです。だから貢献するのは当たり前。私たちの発信を「きっかけ」にこの地に住んで良かったと思う人が増えて、もっと良くしようという活動が「点」から「線」となって繋がっていく。そんな中で必要とされ、また仕事をさせてもらえると思っています。昨年、フランスを旅して、友人でもある北海道出身のシェフたちと語り合う機会がありました。彼らは海外からの視点で北海道の良いところ、悪いところがわかっていて、たくさん刺激を受けてきました。彼らにいつか「北海道、こんなにおもしろくなっているよ。帰っておいでよ」って言えるようにしたいですね。

 

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        © 2011 『しあわせのパン』製作委員会

 

鈴井 亜由美(すずい・あゆみ)さん
北海道小樽市生まれ。鈴井貴之、TEAM NACS(森崎博之、安田顕、戸次重幸、大泉洋、音尾琢真)らアーティスト25人が所属する芸能プロダクション「クリエイティブオフィスキュー」代表取締役社長/プロデューサー。自ら企画した映画『しあわせのパン』(2012年)、『ぶどうのなみだ』(2014年)など、北海道からエンターテインメントを発信しつづけている。

株式会社クリエイティブオフィスキュー

URL https://www.office-cue.com

※各種情報は記事掲載当時のものです。現在は変更となっている場合がございます、予めご了承ください。

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