大切な服に染みを付け、クリーニングに出しても落ちなかった経験はありませんか?そんな時の救世主ともいえる染み抜きのエキスパートが白石にいます。「染み抜き化学研究所」代表の佐藤大輔さん。佐藤さんは大手クリーニング会社で、若くして優秀な営業成績をあげ、ほどなく60人の部下の先頭に立つ店舗責任者に抜擢されます。本人曰く「自信満々で、バリバリ仕事をしていた時代」。次々とカイゼンを実行し、社内の生産性を上げることに成功します。が、唯一お客様のニーズがありながらも効率化ができない業務がありました。それが「染み抜き」。「1万着の中の1着。それに5時間かけて数千円。会社としては合わないよね(笑)」。30歳を目前にして「じゃあ自分が儲けてやる」とばかりに「染み抜き専門店」を起業。
ところが早々に直面したのは「依頼が無い」という厳しい現実。「挫折なんてものじゃない。地獄に真っ逆さまでした(笑)」。 ある日、テレビ局から声がかかり、「家庭で出来る染み抜き」というテーマで番組に出演します。それが大きな転機。以後「染み抜きのプロ」として次々にメディアに取り上げられ、一気に全国から大量の染み抜き依頼が届くようになりました。 納品すると、依頼者のその1着への想いの強さを示すかのように、長文の礼状とともに、お酒や地域の名産品が送られてくることもしばしばだといいます。 「若い頃、金を貰うための方法ばかり考えていた。でもそれは違うということに、この仕事を通して気づかされたね。『ありがとう』って言ってもらうためにはどうするか。それが商売の本質なんだって」。
TEXT / 堀田 正紀
PHOTO / 田村 茂雄