住宅街の一角にあるお店ですが、週末平日問わず、ここのパンを買いにくるお客さんの車は途切れることはありません。社長の近藤英美さんが「プティ・フール」を創業したのは36年前。実家の花畑をつぶして建てた8坪の店舗兼作業場がスタートでした。神戸の老舗パン店での修業時代、フランス人の職人から直接手ほどきを受けたという近藤さん。「最初から、最高のパンを作りたいという想いがあったので、当時高価だったスーパーキングという輸入小麦やフレッシュバターを妥協なく使っていました」。
しっとり、ふわふわした食感は、添加物で出せても、小麦本来の味を引き出すためには、やはり素材にこだわる必要があったと言います。「調理パンも、パンが美味しくなければだめ。具が勝ち過ぎてもだめ」。そのバランスに繊細な配慮がなされています。例えば、人気の玉子サンドには、味をまろやかにするため、エタムチーズを微量混ぜ合わせているそう。パン職人に必要なことは?と尋ねると「真面目であること。そして仕組みに目を向けること。なぜこの材料、なぜこの工程が必要なのか理解していないと応用が利かないし、成長しない」と言う近藤さん。
店名の「プティ・フール」とは「小さな窯」。「目が行き届く大きさの窯で丁寧に焼く。いつまでもそれは忘れたくない」。開店当初から変わらぬ味という食パンは、今や週に千本以上売れると言います。小さな窯から一日に何度も、美味しいパンが焼き上がります。
上の写真は、大人気の食パン(1本/640円)は、ふっくらモチモチ。
TEXT / 堀田 正紀
PHOTO / 田村 茂雄