店主中明澄人さんと奥様の真由美さん、二人が営む中華の店「旬菜酒家なかなか」。洞爺のウィンザーホテルなどで長年料理の腕を磨いてきた澄人さんが「自分の店を開く」と決断したとき、真由美さんにとってはちょっとした青天の霹靂。
「結婚してまだ1年目でしたから(笑)」でも、不安よりも、「どんな店にしようか」と二人で語らう時間が楽しい日々でした。「女の人でも入りやすい中華屋さんにしたいね」という真由美さんの考えに澄人さんも賛成。2006年、カフェのような佇まいで、旬の野菜をふんだんに使った創作中華を提供する「なかなか」が誕生しました。油を抑えたヘルシーな料理は、女性はもとより、年配のお客様にも好評で、普段使いの店として足繁く通う常連さんも多いとか。
「『こんなのが食べたい』というリクエストに応えていたら開店当初の倍に増えちゃった」という豊富なメニューも自慢。お客様の期待に添いたいという、澄人さんの誠実な人柄がうかがえるエピソードでもありますね。二人とも店を開くまでは縁のなかった南平岸。今は住まいも移してこの地を愛する住人です。
「この界隈、なんだか時間がゆったりと流れている感じがあって、肌に合うんです」と話す澄人さんは、オフの日に二人のお子さんと公園を散歩したりして過ごすのが至福の時間。 そんな二人が描く「なかなか」の未来予想図は?
「店を大きくしたいといった欲は無いんです(笑)。地域のお客様に恵まれて今があるので、この街の中華屋として、今のペースで長く続けられたら一番ですね」と澄人さん。真由美さんも理想は同じ。「通ってくださる家族が一緒に年を重ねて、お子さんやお孫さんに『大きくなったね』みたいな会話ができたらいいなあ」。
気軽に入れる雰囲気と美味しい中華。来る人を安らいだ気持ちにさせてくれるお店です。
TEXT / MASANORI HORITA
PHOTO / SHIGEO TAMURA