1973年。札幌オリンピックの翌年に産声を上げた「オーム模型店」。当時からの佇まいのままここにあり、全道、時には海外からも模型ファンが足を運びます。
「2、30年ぶりにひょこっと『おばさん、元気だった?』って顔を見せてくれるお客さんもいるよ」と話してくれたのは専務の逢坂利江さん。模型の小さなパーツから大型のプラモデルまで、所狭しと商品が置かれた迷路のような店内。でも、どこにいても利江さんの明るい声が聞こえてきます。「お客さんと接するのが好きでさ、それが昔から私の元気の源なのかな」。
ご主人の逢坂豊さんが脱サラして始めたこの店に、開店当初から立ち続ける利江さん。長くこの街で時代の移り変わりを見てきました。
「昔のお客さんは、貯めたお小遣いやアルバイトしたお金で『今月はこれ、来月はこれ』って、ちょっとずつ買い揃えてたけど、今は、どんとひとまとめで『はい、カード』だね。お客さんの年齢層が高くなったんだわ」
「今、大人のミニ四駆がブームなんですよ」と傍らから長男の健一さんが教えてくれました。「模型作りは忍耐力を養うので、もっと子どもにも親しんでほしいですね」。健一さん自身も幼い頃から模型に熱中。今、ラジコンのサーキット場を完備した川下店の店長です。ラジコンは走らせる場所が必要なことから、アフター・サービスの一環でコースを造ったそう。定期的に競技会も開催して、お客様とのコミュニケーションの輪も広がっています。
「この辺に、美味しいラーメン屋さんある?」「あるよ。どんな味が好み?」
初めて来たお客さんであっても利江さんは「明るく、分け隔てなく」接します。品揃え、スタッフの商品知識が凄いオーム模型店。加えて利江さんの気取らない人柄が「また来たい」と思わせる魅力なのかもしれません。
「母は目標なんです」。健一さんがニコリと笑いました。
TEXT / MASANORI HORITA
PHOTO / SHIGEO TAMURA